ひとり親世帯の学び直し支援について、“学び直し”をした当事者の私が思うこと
シングルマザーの貧困問題が取上げられる度に、来年度から実施予定の「ひとり親世帯の学び直し支援」についての意見も目にするようになってきた。
よくある意見が「学び直しをする時間をどう確保するのか」である。
参考までに日経ビジネスに掲載された記事の一部を載せておく。
政府は来月からは、高校卒業資格の取得などを目指すシングルマザーらの「学び直し」を重視し、講座受講のための費用を補助する制度を新たに始める予定だが、子供と向き合う時間すら取れないシングルマザーたちが、どうやって「学び直す」時間を作ればいいのだろうか。
だいたい転職の相談に行きたくても、平日の昼間に仕事を休んで相談に行くことすらできないわけで。どんなに正社員になりたくても、正社員になるには学歴やスキル習得が必要だとどんなに言われても、今を生きるのが精一杯の母親たちは、明日の食事のために会社に行く。それが現実。そう、これが現実なのだ。
沖縄県ひとり親世帯など調査と実例を挙げながら反論したいところだが、めんどくさいし、そんなアタマよくないので止めておく。
ただ、「時間をどうやって確保するのか」という議論展開は、母子世帯の悲惨な現実を伝えると同時に“学び直し”の機会を奪うことになる。
実際に私が23歳になる年に定時制高校に入学して感じたのは、アルバイトと学業の両立が困難だ、ということだった。
私生活では、似たような境遇にある中卒シングルマザーから「ゆかこは、高校通えて良いな。私は金銭的にも時間にも余裕がないから」と、何度も言われていた。
時間的な課題と経済的な課題の両方を一気に解決するのは、とてもじゃないが難しい。
それに、子育てをしながら“学び直し”をするというのは、かなりの根気を気力を要する。
せめて、経済的な負担だけでも軽減できたら、との思いでシングルマザーの当事者団体に所属し、“学び直し”の必要性を訴えてきた。
私が視てきた世界は、中卒が足かせになり昼間のアルバイトを探せば最低賃金のアルバイトばかりで、“夜の世界”から脱け出したくても、脱け出せずにいて、数少ない選択肢の中から目の前の生活を優先して生きていく、サバイバルのような生活だ。
こんな事を言うのもおかしな話だが、私が所属していた“しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄”のスタッフの中でも、中卒は私だけで他のスタッフと同じ金額を稼ごうと考えるのは、あまりにもムリがあった。
時間的な貧困の解決も考えなければいけないが、“学び直し”に関する経済的な支援を実施することで、給付の奨学金に応募する気力さえあれば、校納金や子どもの延長保育代をどうにか賄うことができる。
ひとつひとつ丁寧に紐解いていかなければいけないはずの課題を、まとめて議論されるほど迷惑な話はない。
あまりにも“現実”から飛躍している議論は、現実世界で生きている一部の人たちの可能性を潰す危険性も孕んでいることを配慮して頂きたい。