違法な手段で稼いだであろうお金の温かさ
高等職業訓練給付金の審査オチして、審査に“落ちた”だけのはずなのに「この処分に」と書かれてた通知書を見て、「ああ・・・申請することは罪なのか、だから“処分”を受けるのか」とネガティブ思考を炸裂させ、寂しい夜にツムツムするか、英語の課題でもやろうかと考えていた。
とりあえず、Twitterを閉じるとLINEの通知1。
さすが、深夜1時ごろの連絡だけあってクズ仲間からの連絡だった。
「いま、飲んでるから来ない?」と。
一瞬、外に出るのはダルいなあと思ったけど、パジャマで飲める数少ない先輩のお誘いを断る理由などなく、「いくー!どこー?」とだけ返信して家を出た。
雑誌の付録のタンクトップ、ユニクロのグレーのスウェット姿で、居酒屋とスナックの客層がキレイに分断している街の、1番高いビルの7階に向かった。
むかしは栄えていたんだろうなーと思わせる噴水があるビルだけど、時間が遅かったのか噴水の存在感はなく、ただ、今日は街全体がヒマそうだな、と夜界隈のひとの視点からみてしまった自分に「今は学生だから!」と言い聞かせ、エレベーターに乗った。
先輩はガールズバーで飲んでる!としか情報をくれなかったのに、7階にはガールズバーしか入ってないし、電池残量13%のiPhoneさんに頑張っていただき、先輩に店の外まで出て来てもらった。
「あ、いた!」と先輩。
先輩も安定の部屋着姿だった。
店のなかに入ると、やたらテンションが高いお兄さんが居て、先輩の仕事(違法www)繋がりのひとらしく紹介された。
最近の私の紹介のされ方は「今は大学生だけど、昔は極妻だったんです!」である。
なんとも歪な記号の組合せだが、歪んだ過去を持っている私をざっくり伝えるにはもってこいなセリフだし、連載に書いているような“キャバ”とか、“ホステス”とかの記号は、あの界隈では当たり前すぎて何の意味もない。
私とやたらテンションの高いお兄さんは、(たぶん)初対面にも関わらず・・・。
お兄さんは、自分の地元の友達の話をしてくれた。
お兄さんの友人は、高校に入学して退学になり、また高校に入学したものの退学になってしまい、三度目の正直なのだろうか高校卒業程度認定試験に合格し、大学に進学したらしい。それも、2年か3年遅れでの大学進学だから、成人した人がボッチで大学に通うのとわけが違う。かなりの気合いと根性が必要だったはずである。
もちろん、お兄さんも友人の進学に驚いたが「すごい」と話していた。
そして、お兄さんは黒の長財布から諭吉を1枚取り出して「子どもに何か買ってあげるか、子どもを遊びに連れていってあげて!」と言った。
「昔は悪いことしてただろうけど、大学行って頑張っているんだから」と。
わたしがお礼を言い、受け取った1万円札は、お兄さんがリスクを背負って稼いだお金であることは間違いないし、もっとストレートに言えば、違法な手段で稼いだお金である。
しかし、わたしの大学進学に対するエールと子どもを気遣う言葉とともに受け取った“お金”には、とても人間味があって、温かさがある。
わたしが“処分”を受けた給付金は、子どもへの配慮なんてしてくれないし、わたしの子どもが、就寝時間にわたしが居ないことで哺乳瓶を使い牛乳を飲んでいることなんて関係ない。それでも、子どもに何かあれば責め立てられるのは“親”であるということだけを、再確認させられるだけで、それ以下でも、それ以上でもない。
わたしは、寂しい夜に違法行為で稼いでいるひとからの“優しさ”という名の、本来ならば社会の機能としてなくてはならないはずの、“再分配”の恩恵をうけた。